顧問弁護士を採用するメリットは前回記事にて紹介いたしました。必要性について理解していただけましたでしょうか。
そうはいっても、企業として顧問弁護士を採用するとなると、経費がかかってきます。そこで、顧問弁護士を雇うことで発生する経費と、受けられるメリットを考慮し、費用対効果を考えなければなりません。
そこで、会社の状況に応じて3つに場合分けをし、顧問弁護士を採用すべきか、企業様の目線から、その費用対効果を検討してみました。
既に顧問弁護士がいる会社
まず最初は、既に顧問弁護士がいる会社です。
既に顧問弁護士がいらっしゃる会社であれば、「顧問弁護士が必要か」など検討する必要はないようにも思います。しかしながら、現在の顧問弁護士に満足がいっているか、十分なのかどうかは、一度検討してみてもよいでしょう。
実際、「顧問弁護士はいるけれども、顧問弁護士以外の弁護士の方に依頼したい」という会社さんは少なくありません。
理由は様々です。切り替えるというお話は少ないのですが、「既存の顧問弁護士の先生は優秀だが、それゆえ敷居が高く、些細なことを相談するには気が引けてしまいます。現場レベルの細かな部分を気軽に相談・質問できる存在がほしい」といったお声を伺うことがあります。また、「既存の顧問弁護士の先生は労働問題やITに詳しくないので、そういった問題を処理できる存在が必要」といったような、「顧問弁護団のメンバーが不得意な分野をカバーできる若手の弁護士が必要」といった場合が多いです。
お力になれる部分は必ずありますので、ご興味をお持ち頂けましたら、お気軽にご相談ください。
顧問弁護士はいないが、弁護士を年に3回以上使う会社
こういった会社の場合は、顧問弁護士というよりも、紛争が生じた場合や、重要な契約書のレビューのために、スポット的に弁護士に相談するという形で利用しているかとおもいます。そして、そういった場合の割引を考慮しても、固定費をかけるよりは顧問弁護士を雇わない方がよいという判断があることが多いと思います。
ただ、当事務所の顧問契約と比べて頂きたい点が1つあります。より強調したいのは、紛争の予防のためにもっと事前のリスクヘッジに投資をすべきではないか、ということです。生じた紛争を教訓に、改善を図られる会社もありますが、一度大きな紛争が生じてしまうと本業に支障を来たすこととなります。そこまでいかずとも問題解決のために十分な労力を割くことができない状態になることが、特に中小企業の場合では多いです。また、一挙に抜本的な改善ができる場合は少なく、継続的な改善の努力が必要な場合の方が多いと思います。しかし、顧問弁護士なしでそれを行っていくことは事実上困難である場合も少なくありません。
弁護士に依頼する機会が多いのであれば、せっかくですから、スポットでの依頼の費用の割引を受けながら、顧問契約をされることをおすすめします。
弁護士をたまに使う会社、弁護士を使ったことがない会社
こういった会社の場合は、そもそも「法務」に対するニーズが顕在化していないものと思います。そのため、顧問弁護士は不要だろうと思われがちです。
実際、社内の人材によりそういった手当ができているから不要だという場合も少なくありません。しかし、一方で、単にそういった意識や人材が不足しているため、会社で必要な法務が認識できていないという場合も多いです。
そこで、会社に「法務」のニーズはないのか、振り返って頂くことをおすすめします。
まず、「大きなニーズ」と「小さなニーズ」に分けてみましょう。
「大きなニーズ」
「大きなニーズ」とは経営者レベルで認識すべきリスクのことです。
「大きなニーズ」の例をいくつか上げてみましょう。
【平時】
1.売上を直接支える取引の契約(と売掛金不払に対する債権回収)
2.企業秘密の保持
3.知的財産権の確保と戦略的運用
4.売上原価のための仕入の契約(仕入確保の観点からの検討)
5.従業員の雇用関係(セクハラ・パワハラ、懲戒や解雇)
6.事業所に関する契約(賃貸借や請負)など、
【設立時】
7.組織設計や、資本政策
【新規事業参入時】
8.業法含む法令違反の有無や許認可
9.ビジネスモデルと潜在するリスクの検討と対策
10.商標を含む知的財産戦略
などが考えられます。
たくさんあるように思われたでしょうか?他にも、事業を縮小する場合や承継する場合なども「大きなニーズ」です。
これらの10うち、3つ以上必要なのに検討出来ていない項目があると、黄色信号です。リスクが顕在化したときに大きな問題に発展する可能性がある項目が3つもあるわけで、法的な対策を検討すべきかと思われます。
こういったリスクマネジメントは、社内で検討すべき事柄ですが、これまでそういったことが検討されてこなかった最大の問題は人材不足ではないでしょうか?
顧問弁護士をつけることで、法務担当者の育成にもつながり、人材不足を解消することができるようになりますし、法務担当者がいない場合は、その代用に使うこともできます。例えば、週に1日は、顧問弁護士が出社して社内からの相談に応じることもできます。顧問契約は委任契約なので、解約が自由です。そのため、法務の人材不足は、顧問弁護士で解消するのが最も経済的かつ効果的です。
「小さなニーズ」
「小さなニーズ」とは現場レベルでの悩みや疑問のことです。これは無数にあるといっても過言ではありません。
例えば、リーガルチェックと呼ばれるものは、「大きなニーズ」だけでなく、「小さなニーズ」に対するものも多いです。
「大きなニーズ」で触れたこと以外にも、様々な契約書を締結することがあります。こういったとき、初めての契約の場合は、特に専門家のリーガルチェックを通しておきたいとお考えになるのが自然でしょう。
また、社内規程の見直しにあたっても、同様です。
コストに見合った便益があるか
ここまで、ニーズ(効果)について触れてきました。
一方のコスト(費用)についてですが、当事務所では月額5万円を基本にしております。(詳細はこちらをご覧ください)
これまで述べてきたように、法務は必要です。どんな会社でもニーズはあります。
そのため、企業様が、ある程度の規模(業界や業種によって異なるため一概には言えませんが…)になり、軌道に乗ったときには、顧問弁護士をつけることをご検討頂いた方がよいだろうと思います。
もちろん、企業様によって、法務ニーズのボリュームは異なります。ニーズはなくはないが、弁護士に頼む水準か否かは微妙という場合もあると思います。
また、企業様にとっては、月額5万円で弁護士がどの程度動いてくれるのか、わからない面もあると思います。
両者相俟って、顧問弁護士の採用に躊躇する場合もあると思います。
そういった場合は、例えばスポットでリーガルチェックを依頼して働きをみる、期間限定で顧問弁護士を採用してみるのがいいと思います。
以上、企業様の状況に応じて検討してみました。顧問弁護士に不満があったり、採用するかどうか迷われている企業様の参考になれば幸いです。