相続が発生したとき、相続人同士で話し合いがまとまらないケースは少なくありません。そんなとき、弁護士に相談することで、解決につなげることができます。とはいえ相続については一般的になじみがなく、弁護士に依頼するとどのくらいの費用がかかるのかイメージできない方が多いでしょう。
そこでこの記事では、実務に関わっている弁護士が、相続・遺産分割の弁護士費用の相場について解説します。
「遺産分割協議や調停を依頼した際に、トータルでかかる費用の目安が知りたい。」「弁護士費用は誰が払うの?安くする方法はある?」
このように思っている方は、ぜひ参考にしてください。
相続・遺産分割にかかる弁護士費用の種類と相場
弁護士費用の費目は、主に以下のように分けられます。
- 相談料
- 着手金
- 報酬金
- 実費
- 日当
費用については一律に決まっているわけではなく、事務所や弁護士ごとに異なります。依頼の際は、事前に問い合わせて見積もりを出してもらいましょう。
かつては(旧)日本弁護士連合会報酬等基準という取り決めにより、一律の弁護士費用が定められていました。2004年に廃止されていますが、今でも参考にしている事務所は多くあり、一般的に高額になる傾向があります。そのため、この基準で算定される額が上限と考えるとよいでしょう。
相談料:30分5,000円程度・無料の事務所も!
相談料とは、その名の通り相談時に発生する費用です。相談料の相場は、30分~1時間あたり5,000円~10,000円(税抜)程度です。中には「初回は60分無料」のように、初回相談料を無料としている事務所も多く見られます。
着手金:最低20~30万円・遺産額によって変動
着手金は、弁護士に依頼する際に最初にかかる費用で、具体的な事案を依頼するときに発生します。依頼を経て期待通りの結果を得られなかった場合でも返還はされません。
着手金は最低でも20~30万円かかることが多く、遺産額や相続人が多かったり事案が複雑だったりすると、高額になることがあります。
また、着手金の金額設定に(旧)日本弁護士連合会報酬等基準を参考にしている事務所もあります。その場合は、見込まれる経済的利益に応じて8%〜2%ほどの金額が設定されています。
報酬金:経済的利益によって変動
報酬金は事案が解決したときに支払う費用です。依頼者が得た経済的利益=取得した遺産額の大きさに応じて割合が定められており、割合は事務所により異なります。
着手金と同様、(旧)日本弁護士連合会報酬等基準を参考にしている事務所もあります。その場合は、経済的利益に応じて16%〜4%ほどが報酬金の割合となる場合が多いようです。
実費:数千円~数万円
実費は、弁護士が依頼を受けた事案を処理するためにかかる必要経費です。
交通費や郵便代、裁判所への印紙代などが実費の中に含まれます。
日当:1日あたり1~5万円程度
日当とは、弁護士が遠方に出張した際の費用のことです。弁護士が裁判所に出廷するたびに支払われる出廷日当として、裁判所の期日に出席した際の報酬を定める場合もあります。
1回の出張、出廷につき1万円~3万円程度が相場です。
遺産分割調停・協議の弁護士費用の具体例|総額いくらかかる?
遺産分割協議・遺産分割調停の代理交渉を依頼した際にトータルでかかる費用を、具体例を交えてご紹介します。
(旧)日本弁護士連合会報酬等基準を採用した場合と、当事務所「虎ノ門法律経済事務所 上野支店」へ依頼した際の弁護士費用をそれぞれみていきましょう。
先ほど解説したとおり、旧基準を採用している場合は高額になりやすいため、上限と考えてよいでしょう。金額はあくまでも目安となり、事案に応じて費用は変動するので注意してください。
遺産分割協議の弁護士費用の相場
【具体例】相続人同士で揉めている遺産分割協議を解決すべく、弁護士に代理交渉を依頼。その結果遺産分割協議が成立し、依頼者が1,500万円の遺産を相続することになったケース。
〈旧基準の場合(上限)〉
項目 | 金額(税込) |
法律相談料 | 11,000円 |
着手金 | 616,000円 |
報酬金 | 1,232,000円 |
実費 | 約10,000円 |
合計 | 1,869,000円~ |
■計算式
- 着手金:(1,500万円×5%+9万円)×2/3+税
- 報酬金:(1,500万円×10%+18万円)×2/3+税
※着手金・報酬金は(旧)日本弁護士連合会報酬等基準をもとに計算
〈虎ノ門法律経済事務所 上野支店の場合(参考値)〉
項目 | 金額(税込) |
法律相談料 | 無料 |
着手金 | 275,000円 |
報酬金 | 1,430,000円 |
合計 | 1,705,000円 |
■報酬金の計算式
1,500万円×6.6%+44万円
虎ノ門法律経済事務所 上野支店の料金については、下記で詳しく触れています。より詳細に知りたい方は、ぜひ確認してみてください。
遺産分割協議→遺産分割調停の弁護士費用の相場
【具体例】遺産分割協議の代理交渉を弁護士に依頼したが成立に至らず、遺産分割調停の代理交渉も依頼。その結果、依頼者が2,000万円の遺産を相続することになったケース。調停期日は8回。
〈旧基準の場合(上限)〉
項目 | 金額(税込) |
法律相談料 | 11,000円 |
遺産分割協議の着手金 | 799,300円 |
遺産分割調停の着手金 | 399,600円 |
報酬金 | 1,598,600円 |
出廷日当 | 88,000円 |
実費 | 約30,000円 |
合計 | 2,926,500円~ |
■計算式
- 着手金:(2,000万円×5%+9万円)×2/3+税
- 報酬金:(2,000万円×10%+18万円)×2/3+税
※報酬金は(旧)日本弁護士連合会報酬等基準をもとに計算
〈虎ノ門法律経済事務所 上野支店の場合(参考値)〉
項目 | 金額 |
法律相談料 | 無料 |
遺産分割協議の着手金 | 275,000円 |
遺産分割調停の着手金 | +110,000円 |
報酬金 | 2,200,000円 |
合計 | 2,585,000円 |
■報酬金の計算式
2,000万円×8.8%+44万円
虎ノ門法律経済事務所 上野支店の料金については、下記で詳しく触れています。より詳細に知りたい方は、ぜひ確認してみてください。
遺産分割の弁護士費用が高額になるのはどんなケース?
ここでは、どんな場合に遺産分割の弁護士費用が高額になるのかご説明します。
相続財産や相続人が多い場合
弁護士費用は、相続財産や相続人の数が多くなるほど、高額になる傾向があります。
弁護士費用は依頼人の経済的利益により変動するので、遺産が多くなるほど経済的利益は高くなり、その結果弁護士費用も高くなるのです。また、相続人の数が多くなると手続きが複雑化することがあり、報酬金が高額になるケースがあります。
調停や審判に発展した場合
裁判外でまとまらず、調停や審判に発展した場合、弁護士費用は交渉時よりも高額になります。
相続人同士で話がまとまらない場合、家庭裁判所の管轄の下、遺産分割調停に移行します。遺産分割調停の成立には、相続人全員の合意が必要です。相続人全員の合意が得られないなどで不成立となった場合、遺産分割審判に移ります。
調停や審判では裁判所での手続きが発生するため、費用が増額されるのです。
旧日弁連報酬基準を採用する事務所へ依頼する場合
依頼する事務所が旧基準を採用している場合、採用していない事務所に比べて、弁護士費用が高額になる傾向があります。旧日弁連報酬基準は既に廃止されており、特に相続に関する分野では、採用していない事務所の方が多いかもしれません。
遺産分割は司法書士や税理士に依頼したほうが安い?
司法書士や税理士に依頼した方が安いと思われがちですが、既に遺産分割に関して紛争が発生している場合は弁護士にしか依頼できません。下記に各士業の対応範囲をまとめました。
<相続・遺産分割での各士業の対応範囲例>
取扱分野 | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 |
各種調査 | 〇 | 〇 | 〇 |
遺産分割協議書作成 | 〇 | 〇 | ○ |
相続登記(不動産名義変更) | 〇 | 〇 | × |
交渉・調停・訴訟対応 | 〇 | × | × |
共通している業務もあるものの、司法書士や税理士も弁護士と同様に料金は自由に設定可能です。同じことをするなら司法書士や税理士の方が安く済むというイメージはありますが、相続案件では登記や税務も関係するケースが多いため、全体の見積を得なければ、比較することも難しいです。
遺産分割以外の相続に関する弁護士費用相場
ここからは、遺産分割以外の相続に関する弁護士費用の相場をご紹介します。
相続税申告
相続税申告を弁護士に依頼する場合、報酬額は遺産総額の0.5~1%程度です。
実際には手続きが煩雑になることなどで料金が加算され、1%を超えることもあります。事前に確認してみるとよいでしょう。
相続登記
土地や建物といった不動産の所有者が亡くなった場合に、登記名義を相続人に変更しなければなりません。相続登記を弁護士に依頼する場合、主に以下の3種類が費用としてかかります。
- 必要書類の取得費用:数千円
- 登録免許税:不動産の固定資産税評価額×税率0.4%
- 司法書士報酬:5万~10万程度
遺留分侵害請求
遺留分侵害額請求とは、不平等な遺言などにより相続するはずだった遺産の取り分を侵害された場合に、その取り戻しを請求することです。
弁護士に依頼する場合、弁護士名の有無で費用が異なりますが内容証明郵便を送付する意思表示のみでは3万円~5万円程度です。交渉・調停・訴訟に至った場合は、数十万の着手金や報酬金が発生します。
遺言書作成
遺言書は自分で作成可能ですが、法律にしたがって正確に作成しないと無効になることがあります。遺言書作成は弁護士にも依頼可能です。費用については必要書類や日当の支払いを入れると、約10万円~30万円程度になります。
遺言執行者の就任
遺言書の内容にしたがって、遺された財産の引き渡しを行うのが遺言執行者です。
遺言執行者を弁護士に依頼する場合、その費用は依頼者が得た経済的利益によって変動します。(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準には、下記のように報酬額が設定されているので参考にしてください。
遺された財産の額 | 想定される報酬額 |
300万円以下 | 30万円 |
300万円超~3,000万円以下 | 2%+24万円 |
3,000万円超~3億円以下 | 1%+54万円 |
3億円超 | 0.5%+204万円 |
相続放棄
相続財産には、金銭や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。マイナスの財産が多いときに相続放棄をする場合がありますが、他の相続人にも影響が出ることがあるため、弁護士に相談するのがおすすめします。
相続放棄の弁護士費用は、トータルで5万円~10万円程度が相場です。
相続の弁護士費用は誰が払う?相手に請求できる?
基本的に、弁護士費用は弁護士に委任した依頼主が支払います。
その弁護士費用を相手方に請求することはできません。
相続者間の取り決めなどで依頼者が複数人いる場合、代表者が負担するか全員で均等に負担するかは自由です。また、弁護士費用は相続税から経費として控除することはできないので注意しましょう。
相続の弁護士費用が払えないときの対処法
弁護士費用は高額になるため、支払いが難しい方もいるでしょう。ここでは弁護士費用が払えないときの対処法をご紹介します。
着手金等の分割払い・後払いの相談をする
着手金は一括払いが通常ですが、依頼内容や得られる金銭の見通しによっては、分割払いなどにできることがあります。弁護士により異なるため、一部無料にしてもらえないか、完全成功報酬制にできないかなど相談してみましょう。
法テラスの民事法律扶助を利用する
法テラスでは、法律に関する相談窓口の紹介の他、無料の法律相談や弁護士費用の立替(民事法律扶助)も行っています。弁護士費用でお困りの方は法テラスに問い合わせてみるとよいでしょう。
相続の弁護士費用を節約するには?
弁護士費用が高額だと、少しでも金額を抑えられないかが気になるところです。ここでは、相続の弁護士費用を節約するポイントをご紹介します。
複数事務所へ相談して相見積をとる
弁護士費用の設定は、事務所により異なります。少しでも費用を抑えるには、複数の事務所から相見積をとるようにしましょう。初回相談無料の事務所もあるので、初回の相談時に見積もりをもらうことをおすすめします。
依頼者側で対応可能なことは事前に済ませる
すべての手続きを弁護士に依頼すると、その分費用がかさみます。たとえば、戸籍の収集など、専門の知識がなくてもできることはあるものです。依頼者側で対応可能なことは事前に済ませておくと、弁護士費用の節約につながります。
弁護士費用以外の費用も合わせて考える
相続案件では弁護士・司法書士・税理士のそれぞれに各専門分野の依頼をするということも少なくありません。注意すべきは、そうした場合の全体の費用感・見積を適切に把握することです。「弁護士費用は高くなかったけれど、紹介された税理士の費用が高額だった」ということもよくあります。相見積をとったり、「相場感」をベースに確認をしてみてください。当事務所のように、ワンストップで対応できる事務所へ相談してみることもおすすめです。
費用をかけてでも弁護士に依頼するメリット
弁護士費用は決して安い金額ではありませんが、費用がかかったとしても弁護士に依頼する大きなメリットが3つあります。
法律上公平な解決を図ることが可能
弁護士は、法律の知識を持っている紛争解決のプロです。相続人同士で話をする場合でも、法律上の帰結や現実的なバランス感覚のある弁護士が助言することで、相続人が合意しやすい公平な解決を図ることができます。「公平」は相続における大きなポイントです。
当事者では解決ができなかったことを解決する
相続人同士での話がまとまらず、遺産分割協議が成立しなかった場合でも、弁護士に依頼して適切に手続を進めれば、遺産分割調停や審判を経て、遺産分割をして解決に至ることができます。当事者間でできなかったことが実現できるというのが、1つ目の大きなメリットです。
裁判所での適切かつスムーズな手続
当事者だけで協議が成立しない場合、調停や審判といった裁判所が関与する遺産分割が必要です。裁判所の手続きについて、裁判所が丁寧に教えてくれるわけではありません。裁判所は中立の第三者に過ぎません。弁護士がいれば、調停や審判の進み方や、主張すべきポイントもケースによって適切に判断します。依頼者の利益を守るように、かつ迅速に手続を進められるのです。
弁護士費用の考え方
弁護士費用は安ければよいというわけではありません。相場よりもとても安くサービスを提供しているなと感じたときは、その理由を聞いてみた方がよいだろうと思います。
一方で、高ければ高いだけ良いサービスを受けられるわけでもありません。筆者は、あるベストセラーとなった一般向けの’相続本’を執筆された弁護士に依頼した相談者が、相場の3倍ほどの費用を払っているのに、当初の説明と異なる、筆者の意向を無視した弁護活動をしているとして相談にいらっしゃったことがあります。(資料から推察するに、その相談者さんの言い分がご尤もで、弁護士側に問題があると考えざるを得ませんでした。)
そうしたことから、筆者個人としては、ありきたりではありますが、相談をして信頼できると感じた弁護士に依頼をすべき、但し弁護士費用は相場の範囲内で、という姿勢をおすすめします。
虎ノ門法律経済事務所 上野支店にぜひご相談ください
相続についての相談は、法律のプロである弁護士に依頼することがおすすめです。できれば、相続案件の経験が豊富で、相続税や登記のこともわかる弁護士の方がよいでしょう。
その際、ぜひ虎ノ門法律経済事務所 上野支店への相談を検討してみてください。
遺産相続に関するご相談は、弁護士法人全体で年間500件以上。当事務所は年間30件以上の実績があります。担当弁護士は税理士資格も持ち、相続について全面的な対応が可能です。
初回相談料が無料なので、相続についてお悩みの方はお気軽にご相談ください。