まず、誰に何を与えるのか考える前に、遺産全体を漏れなく把握することをおすすめします。漏れがあると、全体を考え直さなければならなくなることもあるからです。
遺産となる財産のリストアップ(財産目録の作成)をしましょう。 後々税務上の検討も必要ですから、ここでは、民法上の遺産だけでなく、相続税法上のみなし相続財産となる生命保険などもリストアップしておきましょう。 プラスの主な財産は、土地・建物などの不動産、非公開会社の株式、預貯金・投資信託・公開会社の株式などの流動資産、生命保険などです。マイナスの財産として、借入金があればそれも忘れずに。 国外に資産がある場合も、この段階のリストには挙げておきましょう。とにかく漏れなくが肝要です。
次に、それらの財産を誰に承継させるかを考えます。 そのときのポイントは、何よりもバランスよく、です。 ではどうするとバランス良くなるのか、整理してみましょう。 まず、ベースは法定相続分です。それがもっとも公平で争いになりづらいからです。 次に、あなた(遺言者)が、資産形成や扶養・介護等のために受けた寄与や、逆にあなたがそれまでに与えた経済的利益などを考慮します。それに応じて、法定相続分を修正します。少しだけ凸凹を作るイメージです。公平から衡平へ、というイメージです。
そして、今度は財産側の事情を考えます。つまり、空間的な制約のある資産、具体的には不動産と非公開会社の株式や事業をどうするかを考えます。これらは流動資産と異なり、空間的な制約を受けます。そのため、それに近い場所にいる相続人に取得してもらうのが自然です。(こういった分け方は相続税の節税(特例の利用)とも親和的です。)ふさわしい相続人がいない場合、第三者への売却等を考える必要が出てきます。事業承継が必要になるのもこの場合です。
以上を考えれば、自ずと適切な分け方が見つかってきます。自分の死後ではありますが、未来に思いを馳せる作業でもあります。その祈りを込めて、お考えいただければと思います。