テレワーク・在宅勤務の留意点と対処法 第2回

目次

在宅勤務実施の留意点

◆労働基準関係法令の適用
労働基準法上の労働者については、テレワークを行う場合においても、労働基準関係法令が適用されます。

◆使用者は、労働契約を締結する際、労働者に対し、賃金や労働時間のほかに、就業の場所に関する事項等を明示しなければなりません。(労働基準法第15条、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第5条第1項第1の3号)
 そのため、労働者に対し就労の開始時にテレワークを行わせることとする場合には、就業の場所としてテレワークを行う場所を明示しなければなりません。

◆テレワークの実施とあわせて、始業及び終業の時刻の変更等を行うことを可能とする場合は、就業規則に記載するとともに、その旨を明示しなければなりません(労働基準法施行規則第5条第1項第2号)
(厚生労働省『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』p.6労働基準関係法令の適用及び留意点等 参照:https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf)

1.主な検討事項

【項目】/ ●内容

【対象者】

●介護・育児・疾患をもっている社員などに限定するか
 テレワークの利用を希望するすべての従業員が、業務の種類にかかわらずテレワークを実施できることが理想です。
 ただ、新たにテレワークを導入する段階では効果検証がしやすいように、まずは小規模で開始し、対象業務と対象者を選定することも検討ポイントになります。
(厚生労働省『テレワーク導入のための労務管理等Q&A集』p.10 Q1-7(4)対象者の決定:https://telework.mhlw.go.jp/intro/prs/)

●職種や担当業務・役職等で対象者を限定するか
 テレワークは、自律的・自己管理的に仕事を進めることが求められるため、仕事の進め方や報告・連絡など、会社のルールを理解していることが必要です。
 新入社員や育成社員、標準以下の実績者、頻繁に直接会って行うコミュニケーションをとる必要がある業務の従事者などを対象外としている企業もあります。
(厚生労働省『テレワーク導入のための労務管理等Q&A集』p.10 Q1-7(4)対象者の決定:https://telework.mhlw.go.jp/intro/prs/)

【対象業務】

●在宅勤務で実施できる業務、実施できない業務の整理
 テレワークの対象となる業務を選定するに当たっては、「業務」単位で整理することがポイントです。

 まずは、業務全体の「棚卸し」を行い、テレワークで実施しやすい業務と実施しにくい業務を整理しましょう。
 業務の「棚卸し」は、例えば、次のような観点で行うことが考えられます。

  • ① 業務にかかる時間 : その業務にどれくらいの時間がかかるか。
  • ② 使用する書類 : 使用する書類はあるか。書類は紙媒体か、電子化されたファイルか。
  • ③ 使用するシステムやツール : アプリケーションやソフトウェアなど、必要なシステムやツールはあるか。
  • ④ セキュリティ、情報漏洩リスク : 業務上で取扱う顧客情報や個人情報があるか。
  • ⑤ 関係者とのコミュニケーション : 業務は何人で行うか。関係者とのやりとりの頻度はどのくらいか。

(厚生労働省『テレワーク導入のための労務管理等Q&A』p.11 参照:https://telework.mhlw.go.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/RomuQA.pdf)

【利用日数】

●常時、週1日、週2日、日数の定めなし等
 社内の重要な会議や、顧客・取引先との打ち合わせ等が設定されている日は、利用不可とする等の運用ルールも可能。

【申請方法】

 事前申請とするか、申請方法はどうするか(勤怠管理システムによる申請、メール・チャットによる申請等)

【セキュリティルール】

 企業経営にとって、情報セキュリティ対策は非常に需要ですが、何を誰から守るのか、その対象を明確にする必要があります。
 総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」によれば、セキュリティポリシー等の「ルール」、社員への教育・啓発活動等の「人」、システム的なインフラ整備等の「技術」の3つのバランスをとることが重要だと述べられています。
 テレワークは柔軟な働き方を手に入れることができる一方、情報セキュリティに対する十分な考慮と、適切な措置が必要です。
(厚生労働省『テレワーク総合ポータルサイト』情報セキュリティと情報システムに関するQ&A:https://telework.mhlw.go.jp/qa/qa2-1/)

●会社から貸与されたPC、携帯電話、テレビ会議システム以外の使用の可否、Wi-Fi接続ルール
 テレワークのために貸与された端末を、本来の業務と異なる用途に使用することは、企業の資産の目的外利用として不適切なばかりでなく、悪意のソフトウェアの感染等の原因になります。
(総務省『テレワークセキュリティガイドライン』p.23:https://www.soumu.go.jp/main_content/000215331.pdf)

●データの持ち出し時・クラウド利用のルール
 テレワークはセキュリティの管理が難しいという人が多いです。しかし、リモートデスクトップ方式や仮想デスクトップ方式、クラウドサービスなどを利用すれば、社外であってもセキュリティを確保した上で業務遂行することは可能です。
(厚生労働省『テレワーク総合ポータルサイト』テレワークの導入方法 (8)システムの準備(セキュリティ:https://telework.mhlw.go.jp/intro/prs/)

●紙・資料の持ち出しや勤務場所以外での印刷可否
 テレワークを実施する上では、文書の電子化は必要不可欠です。既存の紙の文書をどのようにするかが課題となります。しかし、すべての既存の文書を電子化するには膨大な費用がかかるでしょう。どのような文書を電子化し、どのような文書は紙のままにするかを峻別することが必要となります。
 頻繁に参照する必要のある契約書などは電子化した方が、オフィスで仕事をする上でも効果的です。
(厚生労働省『テレワーク総合ポータルサイト』テレワークの導入方法 (9)文書の電子化:https://telework.mhlw.go.jp/intro/prs/)

【労働時間の管理】

 全てのテレワーク勤務者に対して労働時間制が適用されることは、通常勤務の従業員と変わりありません。
 ただし、テレワーク勤務の形態によってはなじみにくい労働時間制がありますので、各社のおかれている実情とテレワーク勤務者の仕事の仕方や業務内容などによって、どの労働時間制を適用するかと考えなければなりません。
(厚生労働省『テレワークモデル就業規則』p.11:https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf

●始業・終業時刻の報告方法
 テレワーク勤務中でも勤怠管理(始業及び終業の時刻の把握)は必要であり、一般的には、始業及び終業の際に上司に電話や電子メールで連絡を入れるという方法がとられています。
(厚生労働省『テレワークモデル就業規則』p.12:https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf

●時間外労働のルール
・「実労働時間やみなされた労働時間が法定労働時間を超える場合」や「法定休日に労働を行わせる場合」
 ⇒時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)の締結、届出及び割増賃金の支払が必要
・「現実に深夜に労働した場合」
 ⇒深夜労働に係る割増賃金の支払が必要
・テレワークを行う労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、使用者はそれをもって当該労働者に係る労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて労働時間や業務内容等について見直すことが望ましいです。
(厚生労働省『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』p.16:https://www.mhlw.go.jp/content/000553510.pdf)

●休憩時間の取得方法・時間
 1日の労働時間が6時間を超える場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は1時間の休憩を与えなければなりません。
(厚生労働省『テレワークモデル就業規則』p.18:https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf

【手当・費用】

 テレワーク時のコスト負担についても取り決めが必要です。
 よく中小企業の経営者の方から、在宅勤務者は給与を下げても良いのではないかという相談がありますが、給与制度は業務内容や所定労働時間といった労働条件に変更がない限り、労働者への不利益変更はできないと考えるべきです。
(厚生労働省『テレワーク総合ポータルサイト』テレワークの導入方法 (7)社内制度・ルールの整備:https://telework.mhlw.go.jp/intro/prs/)

●通信費等の費用負担(会社負担、限度額、請求方法等)
 自宅でテレワークを実施する場合に必要な通信費や光熱費、ICT機器などの費用負担については、あらかじめ十分に話し合い、就業規則に定めておくことが望まれます。
 インターネット環境などはすでにほとんどの家庭で導入しており、追加負担も発生しないため、補助をしていない企業も多いのではないでしょうか。
(厚生労働省『テレワーク総合ポータルサイト』テレワークの導入方法 (7)社内制度・ルールの整備:https://telework.mhlw.go.jp/intro/prs/)

●通勤手当
 通勤手当は終日在宅勤務を行った日は会社に通勤することがなくなり、公共交通機関の通勤定期券相当額と実際に通勤した実費と比較して、定額となる方を支給するケースもあります。
(厚生労働省『テレワークモデル就業規則』p.20:https://www.tw-sodan.jp/dl_pdf/16.pdf

●業務時の服装ルール
 web会議やリモート会議を行う際、初対面の相手がいる場合に失礼にあたらない服装を心がける。

2.適用対象者

1.ポイント

  • ① 従業員の希望は聞くものの、在宅勤務を認めるかについては、最終的には使用者の判断であることを明記。
  • ② 使用者が、従業員に対して在宅勤務を命じることができることも明記。
  • ③ 使用者が、在宅勤務が相応しくないと判断した場合には、在宅勤務の取り消し、出社命令を出せることを明記。

2.規定例

【〇条】在宅勤務対象者

  • 1.在宅勤務の対象者は、次の各号の条件を全て満たし、事前に法人(会社)の許可を得た者とする。
  • (1)在宅勤務を希望する者であること
  • (2)業務の性質上、在宅勤務が可能であると法人が認めた者
  • (3)自らの健康に十分に留意し、自己管理のもと在宅でも円滑に業務ができ法人で業務に従事する際と同等の成果を出せると法人が認めた者
  • (4)自宅の執務環境、セキュリティ環境等いずれも適正と法人が認めた者
  • 2.在宅勤務を希望する者は、【所定の許可申請書に必要事項を記入のうえ、メール・チャット等に変更可】、1週間前までに所属長から前項の許可を受けなければならない。
  • 3.法人は、前2項にかかわらず、業務上の必要がある、在宅勤務を命じることができる。
  • 4.法人 は、業務上その他の理由により、いつでも第1項の許可・前項の在宅勤務命令を取消、又は、法人への出社を命じることができる。
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